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執筆者の写真刀箱師 中村圭佑

製作日記⑦ 設計ミス集

更新日:2020年4月28日

ものづくりをする際、設計ミスはつきものです。

特に初めて作る時(ベースとなる設計物がない時)は設計時に入念に確認しても、いざ実際に作ってみると一発目で100%納得いくものを作れる事はまずありません。



ベテラン設計者の方でもゼロにするのはなかなか難しいのが実態ではないでしょうか。


なので一般的な製造メーカーでは、試作機を何台も作り問題点を少しづつ潰していき、100%に近づけていきます。



開発部門だけではなく、製造部門、品質管理部門など様々な方と設計、組立、品質について協議、確認を経て問題ないと判断されれば晴れて世の中に出すことが出来ます。



時々「リコール」という言葉を聞くと思いますが、それだけ確認しても問題が発覚することがあるくらいにミスを無くすのは難しい作業なのです。

また、1台の時は問題なかったのに1000台作るとそのうちの1台に不良が出たりするなどは良くあることです。



それをどこまで減らす事が出来るかは、設計は勿論のこと、生産指導や生産ラインの組立が肝になってきたりします。

またやはり結局の所ゼロにはできないので、発生したときの対応を考えておくことも大切です。



刀展示ケースはそんなに大量に作る物ではありませんが、私が試作機を何台も作るのは、安全性をより100%に近づけていくためです。


刀という高価な美術品を飾る以上安全性は何事にも代えがたいと考えます。

(試作費用だけで何十万何百万円とかかるので、出来ることなら省きたいのが本音ですが、安全を考えるとそうともいかず…)



前置きが長くなりましたが、

今回は刀展示ケースを作っていく中でしてしまった設計ミスをいくつかご紹介します。




①フロントパネルを1枚の大きなアクリルを曲げて作った事による失敗

これはすごく初歩的な設計ミスで、自身の設計スキルの低さを反省せずにはいられないミスです。

アクリルの板厚は5mmで重量は8㎏位だったでしょうか。

長辺が1.1mあるのでこの事態は容易に想像できます。

恥ずかしい限りです。。



②フロントパネルを防犯ガラスに変更、今度はケース全体が重さで傾く

前回の反省から、アクリルの使用を避けて防犯ガラスにしました。

失敗は写真の通りです。


本体重量が約25kgあり、ガラスが11kgなので「まぁいけるだろう」くらいにしか考えておらず、ガラスドアを開いた際の重心位置の移動について失念していたのが設計ミスの原因です。


動画は以下から見れます。




これも作った後だとなんでこんな初歩的なミスをしたんだー!と嘆きたくなるのですが、設計時は気づくことが出来ませんでした。


大抵このように軽く考えて流してしまった所というのは必ずといって良いほど後で後悔します。



(尚壁掛けすると問題ありませんでした。)

壁強い…!

写真はマンションの壁で、石膏ボードの裏に金属の間柱がありその部分に固定しています。



まぁ結局床に置いたときにダメなので修正必須です。

これは今修正中です。

修正出来たらまたツイッターなんかで報告したいと思います。



今回の件もそうですが、結局の所どこまで気を抜かずに短期集中で設計出来るかというのが大事になってくると思うのです。


前にメーカーで働いていた時は、肝となる部分はなるべく自宅や風呂など静かな場所で考えるようにしていました。

会社だと集中してるときに電話がかかってきたり、会議で席を外さないといけなかったりするじゃないですか、、

会議から戻ってくると10考えていた事が9しか覚えていなかったりするとミスに直結します。



③アクリル刀掛け部分にひび割れ


こうゆう失敗が作ってみて分かる一番多いパターンだったりします。


原因は2つ考えられ、1つは下のイラストのように穴までの距離が少なく(赤い矢印の部分)、ネジを締めた際に力が加わり割れやすいことです。


なので多分下のように赤矢印の幅を広くする事で割れにくくする事が出来ます。


もう1つの原因はネジを締める力が強すぎた事です。


1.5N/mで締め付けてしまいましたが、0.75N/mくらいにしておけばよかったと思っています。

そちらで締めた方は割れていません。

(電動ドライバーを使う事で締め付けトルク(締め付け力)を管理できます。)




ということで…

このように問題が発生すると新入社員の時は落ち込んでいたのですが、だんだん年を重ねるにつれ試作の段階で分かって良かったと思うようになりました。



上記以外にも細かい「こうしておけば良かった」点は沢山あるので、1次試作から2次試作にかけて色々変えています。


例えば1次試作の時は電気系統を上に入れていたのですが、2次試作では下に入れています。

理由は重心位置と組立時の作業性です。


物を作る過程でミスはつきものですが、ミスをした分だけ着実に100%に近づくと思うのでこれからも失敗をポジティブに受け止めて頑張ります。



次回はそろそろ刀展示ケース「漆版」が完成すると思うのでそれについて書こうと思います。


それでは皆様良き刀ライフを~!

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